AIの急速な進化を支えるデータセンターが、米国で新たな社会問題を引き起こしている。巨額の利益を享受するテック企業と、健康不安や電気代高騰の負担を強いられる住民との間で、深刻な対立が勃発。わずか3カ月で3.8兆円規模の建設計画が中止に追い込まれた背景を深掘りする。
「迷惑施設」と化したAIデータセンター
米国では、人工知能(AI)向けデータセンターの建設に対する住民の反対運動が勢いを増している。その背景には、データセンターがもたらす健康不安と経済的負担がある。
データセンターは、その冷却のために大量の電力を消費し、結果として地域全体の電気代上昇を招く可能性がある。さらに、冷却ファンなどから発生する騒音や、一部で懸念される電磁波の影響など、住民は健康被害への不安を抱えている。住民からは「テック企業は収益しか考えていない」という不信の声が上がり、企業側が巨額の利益を得る一方で、地域住民にだけ負担が押しつけられるという構図への危機感が強まっている。
3.8兆円の計画阻止に見る住民運動の力
この住民の反対運動は、単なる感情論に留まらない。わずか3カ月間で、総額3.8兆円にも上るデータセンター建設計画が中止や延期に追い込まれた事実は、その影響力の大きさを物語っている。
特に、ミシガン州などでは、地域コミュニティが連携し、環境への影響や水資源の大量消費といった具体的な問題点を指摘することで、計画の阻止に成功している。AIデータセンターの環境負荷は深刻で、全米での影響は自動車3500万台分の排出量に相当するとの試算もある。
AIインフラの持続可能性への課題
AIブームの裏側で露呈したこの問題は、AIインフラの持続可能性という大きな課題を突きつけている。AIの発展は人類に多大な恩恵をもたらすが、その基盤となるインフラ整備が、地域社会や環境に負の側面をもたらすのであれば、その成長は長続きしないだろう。今後のAI開発においては、技術的な進歩だけでなく、環境・社会への配慮(ESG)が不可欠となる。






