AIの進化に伴い、その計算負荷は増大の一途を辿っています。この課題に対し、フィンランドのアールト大学を中心とする国際研究チームが、光の速度でAI演算を行う画期的な技術「POMMM(Parallel Optical Matrix-Matrix Multiplication)」を開発しました。従来の電子回路の限界を超え、AIコンピューティングの効率と速度を劇的に向上させるこの技術は、AIチップの未来を塗り替える可能性を秘めています。
POMMMの核心:光によるテンソル演算の並列処理
POMMMの最大の特徴は、AI計算の根幹であるテンソル演算(行列の掛け算)を、光が一回通過する間に完了させる点にあります。従来のデジタルチップがステップ・バイ・ステップで処理を行うのに対し、光の特性を利用することで、すべての演算を並列的に、かつ光速で実行します。
技術的なブレイクスルー:フーリエ変換と位相コードの活用
この技術は、フーリエ変換と位相コードという2つの数学的特性を応用しています。研究チームは、最初の行列の各行に固有の位相コードを付与し、光がレンズを通過する際に発生するフーリエ変換を利用して、各行の情報を互いに干渉させることなく分離・追跡できるようにしました。これにより、2つ目の行列を光にエンコードする際に、要素ごとの掛け算を一度に行い、最終的な出力行列を一発で生成することに成功しています。
驚異的な性能と実用性
プロトタイプによる検証では、50×50という比較的大きな行列の演算において、GPUベースの結果と比較して平均絶対誤差が0.15未満、正規化二乗平均平方根誤差が0.1未満という高い精度を達成しました。さらに、画像認識に使われるCNNやTransformerモデルを光学システム上で実行し、GPUと遜色ない予測精度を示しています。
エネルギー効率と将来の展望
POMMMは、受動的な光の整形に依存する部分が多いため、非常に高いエネルギー効率を実現しており、プロトタイプでも1ジュールあたり20億回以上の演算を達成しています。これは、AI処理の低消費電力化に大きく貢献する可能性を示しています。研究チームは、この技術をフォトニックチップに統合することで、さらなる低消費電力化と高速化を目指しており、数年以内に主要なテクノロジー企業に採用される可能性があると見ています。






