導入:AI検索と著作権問題の深刻化
近年、GoogleやMicrosoft、OpenAIといった巨大IT企業が提供する生成AIを活用した検索サービスが急速に普及しています。これらのサービスは、ユーザーの質問に対し、インターネット上の情報を要約して会話形式で回答を生成しますが、その過程で報道機関が作成したニュース記事を無断で使用しているという問題が深刻化しています。この事態を受け、公正取引委員会(公取委)は、国内外の大手IT企業を対象とした実態調査に乗り出しました。
公取委が問題視する独占禁止法上の懸念
公取委が調査に踏み切った背景には、AI事業者の行為が独占禁止法に抵触する可能性が指摘されていることがあります。
「優越的地位の乱用」と「取引妨害」の可能性
報道機関は、記事作成に多大なコストと労力をかけています。それにもかかわらず、AI事業者が無断で記事を利用し、その要約を検索結果として提供することで、ユーザーが元のニュースサイトにアクセスしなくなり、報道機関の広告収入などの収益が減少する事態が発生しています。公取委は、この行為が、巨大IT企業の「優越的地位の乱用」や、報道機関の「取引妨害」に当たる可能性があるとして、実態把握を進めています。
国民の「知る権利」への影響
AI検索による収益悪化が続けば、報道機関は取材・報道活動を維持できなくなり、結果として国民の「知る権利」が損なわれる恐れがあります。また、AIが生成する回答には、事実に基づかない情報(ハルシネーション)が含まれる可能性もあり、情報の信頼性という点でも大きな問題があります。
著作権法のグレーゾーンと今後の焦点
日本の著作権法では、AIの学習段階でのデータ利用は原則として著作権侵害に当たらないとされていますが、文章などを生成し、利用する際には著作者の許可が必要とされています。
パープレキシティ社の主張と国際的な議論
特に、米新興AI企業であるパープレキシティは、日本の報道機関からの記事利用停止要請に対し、著作権侵害に当たらないと主張しており、この問題は国際的な議論に発展しています。公取委の実態調査は、AI時代におけるコンテンツの権利保護と、巨大IT企業とコンテンツ提供者との間の公正な取引慣行を確立するための重要な一石となることが期待されます。






