「ディープラーニングのゴッドファーザー」Yann LeCun氏、次世代AI「世界モデル」スタートアップを設立

MetaのチーフAIサイエンティストであり、「ディープラーニングのゴッドファーザー」の一人として知られるヤン・ルカン(Yann LeCun)氏が、新たなAIスタートアップを設立したことが報じられました。ルカン氏はMetaでの職務を継続しつつ、この新会社を通じて、次世代の人工知能技術である「世界モデル(World Model)」の開発に本格的に乗り出します。このスタートアップは、設立初期段階にもかかわらず、すでに50億ドル(約7,000億円)を超える評価額での資金調達を目指しているとされ、AI業界における新たな巨大プレイヤーの誕生として大きな注目を集めています。

「世界モデル」とは何か?

ルカン氏が提唱する「世界モデル」とは、現在の主流である大規模言語モデル(LLM)の限界を超え、人間のように世界を理解し、未来を予測し、計画を立てる能力を持つAIを目指す概念です。

LLMの限界と世界モデルの必要性

現在のLLMは、大量のテキストデータからパターンを学習し、人間らしい文章を生成することに優れていますが、現実世界における物理法則や因果関係、そして長期的な計画性といった「世界の常識」を真に理解しているわけではありません。ルカン氏は、この限界を克服するためには、AIが感覚入力(視覚、聴覚など)を通じて世界をシミュレーションし、行動の結果を予測する能力、すなわち「世界モデル」が必要不可欠であると長年主張してきました。

評価額50億ドル超の背景

このスタートアップが初期段階で50億ドルという巨額の評価額を目指す背景には、ルカン氏のAI分野における圧倒的な実績と影響力、そして「世界モデル」というコンセプトが持つ破壊的な技術革新の可能性があります。投資家たちは、世界モデルが実現すれば、自動運転、ロボティクス、科学研究など、多岐にわたる分野で既存のAI技術を根本から覆す可能性があると見込んでいるのです。

AIの未来を賭けた新たな競争

ルカン氏のスタートアップ設立は、AI開発競争が「より大きなLLM」から「より賢い世界モデル」へとシフトしつつあることを示しています。OpenAIやGoogleといった既存の巨大AI企業も世界モデルの研究を加速させていますが、ルカン氏というAI界の巨匠が独立したスタートアップを立ち上げたことで、この分野の競争は一気に激化するでしょう。彼の新会社が、AIの次のブレイクスルーを牽引する存在となるのか、今後の動向から目が離せません。

元記事: Yann LeCun confirms his new ‘world model’ startup, reportedly seeks $5B+ valuation