AIデータセンター需要がエネルギー貯蔵市場に「ブームサイクル」をもたらす:UBSの分析

導入文

人工知能(AI)技術の急速な進化は、その基盤となるインフラ、特にデータセンターの電力需要を劇的に増加させています。スイスの金融大手UBSセキュリティーズは、このAIデータセンターの拡大が、今後5年間でエネルギー貯蔵市場に「ブームサイクル」をもたらす可能性が高いとの分析を発表しました。この予測は、AIが単なる情報技術の進化に留まらず、世界のエネルギーインフラにまで影響を及ぼすことを示唆しています。

本文:AIと再生可能エネルギーが駆動する新たな市場

データセンターの電力需要急増とエネルギー貯蔵の必要性

AI、特に大規模言語モデル(LLM)を動かすデータセンターは、膨大な計算資源を必要とし、その結果として電力消費量が急増しています。UBSの分析によると、米国におけるAIデータセンターの拡大に伴う電力需要の増加は、エネルギー貯蔵システムの需要を押し上げる主要因となります。

エネルギー貯蔵は、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの出力変動を補い、電力供給の安定性を確保するために不可欠です。AIデータセンターの電力需要が急増する中で、安定した電力供給を維持するためには、エネルギー貯蔵システムの導入拡大が避けて通れない道となります。UBSは、2026年の世界のエネルギー貯蔵需要が前年比で40%増加すると予測しており、この市場の成長が加速していることを裏付けています。

世界的な市場の成長と地政学的リスク

米国では、再生可能エネルギーが今後5年間で唯一大幅に伸びる発電分野と見られており、エネルギー貯蔵の重要性は高まる一方です。また、中東、中南米、アフリカ、東南アジアの新興市場では、エネルギー貯蔵需要の伸び率が30%から50%超と、世界最速で成長する可能性が指摘されています。

一方で、市場の成長には地政学的なリスクも存在します。特に、中国メーカーは米国市場で20%のシェアを持つ主要プレイヤーですが、トランプ政権の「1つの大きく美しい法」に盛り込まれた中国企業の参入制限が、市場における最大のリスクとして挙げられています。AIの進化が、技術だけでなく、エネルギー政策や国際貿易にも影響を及ぼす時代が到来しています。

元記事:エネルギー貯蔵、「ブームサイクル」突入も | ロイター