AI時代のサプライチェーン防衛:日米韓豪など多国間協力枠組み「パックス・シリカ」発足

「パックス・シリカ」が目指すもの

「パックス・シリカ(Pax Silica)」という名称は、ラテン語で平和を意味する「パックス(Pax)」と、半導体の製造に使われる「シリカ(Silica)」を組み合わせた造語です。この枠組みは、AI技術の進展に伴い、半導体や重要鉱物、エネルギーなどの安定調達が不可欠であるという共通認識のもとで誕生しました。

参加国と協力の焦点

発足時の署名国は、アメリカ日本韓国オーストラリアシンガポールイスラエルの6カ国です。これらの国々は、AI技術開発における主要なプレイヤーであると同時に、半導体製造や重要鉱物資源において重要な役割を担っています。

協力の主な焦点は以下の通りです。

  • 重要鉱物の確保: AIチップの製造に必要なレアアースなどの重要鉱物の採掘、精製、リサイクルにおける連携強化。
  • 半導体サプライチェーンの強靭化: 製造拠点の分散化や技術共有を通じて、特定の国への依存度を下げ、安定供給体制を構築。
  • 技術標準と安全保障: AI技術の国際的な標準化や、技術流出を防ぐための安全保障面での協力。

地政学的な競争とAIの未来

この枠組みは、AI分野におけるアメリカの主導権を強化し、技術覇権を巡る中国との競争に対抗する明確な意図を持っています。AIは経済成長だけでなく、軍事技術や国家安全保障にも直結するため、その基盤となる資源と技術の確保は、各国にとって最優先事項となっています。パックス・シリカは、AI時代の新たな国際秩序を形成する上で、極めて重要な一歩となるでしょう。

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