生成AIの導入が進む一方で、「出力が自社の文脈に合わない」「平準化された回答になりがち」といった課題に直面する企業は少なくありません。この課題に対し、ディー・エヌ・エー（DeNA）の子会社であるDeNA AI Link（DAL）と、「AI社長」を提供するTHAが、エンタープライズ向けAIサービス「リーダーズAI」の共同開発・提供で基本合意しました。これは、企業リーダーの思考や判断基準をAI化し、組織全体の意思決定の質とスピードを高めることを目指す、日本企業ならではのAI活用事例として注目されます。
開発の背景：生成AIの現場利用における課題
DeNAは、生成AIが真に組織の生産性を高めるためには、単なる情報検索や文章生成を超え、“自社の戦略や文化背景を踏まえた判断”や“自社ならではの視点”を提供することが不可欠であると指摘しています。特に大手企業では、経営層や事業リーダーの持つ、企業理念や中長期戦略に基づいた思考や判断基準を、組織全体で効果的に活用できる環境整備が急務とされています。
「リーダーズAI」の具体的な機能と活用方法
「リーダーズAI」は、経営層だけでなく、事業リーダーや各部門のリーダーの思考をAI化し、“理想のリーダー”として活用を深めていくサービスです。
リーダーの知見をAIに注入するプロセス
リーダーのAIを構築する際には、企業理念やIR情報、組織文化といった全社レベルの情報に加え、部門ごとの戦略やマニュアル、そしてリーダー本人への深いインタビューを通じて得た情報を活用します。THAが「AI社長」で培った、インタビューやプロンプト、RAG（検索拡張生成）技術といったAI構築のコア技術が、このプロセスを支えます。
社員の相談窓口としてのAI
完成したAIに対し、社員は日常的に使用するチャットツールからいつでも相談を投げかけることが可能になります。これにより、これまで上司の時間や都合を気にして躊躇していた相談も、気軽に質問できるようになります。AIは、企業の価値観やビジョンに基づき、具体的なアドバイスや判断の軸、思考を深めるための問いかけを返答します。
期待される効果と両社の役割
このサービスにより、社員はAIとの対話を通じて仕事を進めることで、より高精度の企画立案や迅速な問題解決が可能になると期待されています。開発においては、DALが事業主体としてサービス提供・運営・開発を推進し、THAがAI構築のコア技術を提供することで、両社の強みが融合されます。「リーダーズAI」は2026年春より提供が予定されており、日本のビジネス界におけるAI活用の新たな潮流を生み出す可能性があります。
